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Nomad image 好評発売中! 小貫雅男/伊藤恵子 著

    菜園家族物語

       ―子どもに伝える未来への夢―

            日本経済評論社(2006年11月刊)

菜園家族物語・表紙

A5判・並製、371頁
定価(本体2,800円+税)

はじめに



      海図なき時代に漂流する

        日本の、世界の人々に贈る

この一冊。



巨大化の道の弊害と行き詰まりが
浮き彫りになった今、その評価を問い

家族小経営のもつ優れた側面

を再考する。


菜園家族物語


―子どもに伝える未来への夢―

小貫雅男/伊藤恵子 著
日本経済評論社
(2006年11月刊)



菜園家族物語・見本



 挿絵・写真・図版など190点余を織り込み、読みやすく、より理解が深まるよう工夫されている。





A5判・並製、371ページ
定価(本体2,800円+税)
*ご購入は、最寄りの書店で。
 お急ぎの場合は、日本経済評論社(TEL:03-3230-1661)までお問い合
 わせ下さい。
    ジャケット装画:水野泰子



いのち削り、心病む、終わりなき市場競争。

          アメリカ型「拡大経済」日本に
          はたして未来はあるのでしょうか。


    いのち輝く

週休5日制の農的生活。

       21世紀、人々は、素朴な精神世界への回帰と
       人間復活の壮大な道を歩めはじめるのです。



『菜園家族物語』に寄せて
                      作家 小宮山量平さん
 ああ、こういう本こそが待たれていたのだ!―と私はつぶやかずにはいられませんでした。・・・まぎれもなくこの一冊は、“21世紀の 未来社会論”として、こんなにも労働が貶められ、こんなにも正当な権利が踏みにじられ、こんなにも希望の着地点から遠ざけられて いる若い同胞(とも)たちのために、当代の悩みと苦しみという“異物”との格闘の中から生まれて来たと思うのです。

全文はこちらへ。

本書の要旨紹介



子どもたちは、今、不条理の苦しみの世界で
 子どもたちの小さないのちは、その一つ一つまでもが、実に生き生きと、個性的に輝いています。
 むごいことに、時代は、不条理の苦しみの世界に、小さないのちを追い込んでゆくのです。それでも、子どもたちは、精一杯に生きようとしています。
 やがて、子どもたちは、力尽き、最後の、最後の思いを、大人たちに語りかけてきます。
 人間は、燦々と降り注ぐ太陽の光の中で、土や水や風や緑に囲まれて、仲良く、素直に生きさえすれば、いいんだよね、と込み上げる不安を押さえ、呟くのです。

「家族」と「地域」の再構築を
 世界的規模で展開される、市場競争至上主義と、“巨大化”の道の弊害と行き詰まりが浮き彫りになってきた今、私たちは、「家族」と「家族小経営」のもつ優れた側面を再評価し、それを今日の社会にどう位置づけ、どのように組み込むべきかを、つまり、幼いいのち、そして人間を育む場としての「家族」と「地域」をいかにして再構築すべきかを、真剣に考えるよう迫られているのです。

「菜園家族」とは・・・
 18世紀産業革命以来、大地から引き離され、「賃金労働者」となった人間の存在形態は、今ではすっかり人々の常識となってしまいました。
 しかし、やがてこれも、21世紀の世界が行き詰まる中で、新しく芽生えてくるものに、その席を譲らざるをえなくなるにちがいありません。
 「菜園家族」は、こうした時代の転換の激動の中から必然的にあらわれてくる、人間存在の新たなる普遍形態であるのです。

大地への回帰と“高度自然社会”への道
 本書では、「菜園家族」に、人間本来の豊かさと無限の可能性を見出し、人間究極の夢である大地への回帰(レボリューション)と、自由・平等・友愛の“高度自然社会”への道を探ろうとしています。

目次


            *挿絵・写真・図版など190点余を織り込み、読みやすく、
             より理解が深まるよう工夫されています。


はじめに

第一章 「菜園家族」構想の基礎

1 閉塞の時代―「競争」の果てに
  「拡大経済」と閉塞状況  市場原理と家族  「虚構の世界」  生きる原型

2「菜園家族」構想の基礎―週休五日制による
 三世代「菜園家族」  新しいタイプの「CFP複合社会」 主体性の回復と倫理  「菜園家族」の可能性と展望  予想される困難  家族小経営の生命力

3 甦る菜園家族
 ふるさと―土の匂い、人の温もり  心が育つ  家族小経営の歴史性

4 「菜園家族」構想と今日的状況
 危機の中のジレンマ  誤りなき時代認識を  「構想」の可能性と実効性
 誰のための、誰による改革なのか  グローバリゼーション下の選択  二一世紀
 の “暮らしのかたち” を求めて

第二章 人間はどこからきて、どこへゆこうとしているのか

1 新しい生産様式の登場
 道具の発達と人間疎外  市場競争から恐慌へ  そして衰退過程へ  一九世紀
 イギリスにおける恐慌と二一世紀の現代

2 人間復活への新たな思索と実践
 新しい思想家・実践家の登場  ニューハーモニー実験の光と影  資本主義の
 進展と新たな理論の登場  人間の歴史を貫く根源的思想

3 一九世紀、思想と理論の到達点
 マルクスの経済学研究と『資本論』  人類始原の自然状態  自然状態の解体と
 その論理  資本の論理と世界恐慌

4 一九世紀に到達した未来社会論
 マルクスの未来社会論  導き出された「共有化論」、その成立条件  今こそ
 一九世紀理論の総括の上に  マルクス「共有化論」、その限界と欠陥

第三章 菜園家族レボリューション 〜高度自然社会への道〜

1 資本主義を超克する「B型発展の道」
 生産手段の再結合 「家族」と「地域」の場の統一理論  「B型発展の揺籃期」 「B型発展の本格形成期」 「CFP複合社会」の展開過程

2 人間と家族の視点から
 個体発生と「家族」  「家族」がもつ根源的な意義  人間が人間であるために

3 自然状態への回帰と止揚
 生産手段「再結合」の意義  「自然社会」への究極の論理 “流域地域圏社会”
 の特質―団粒構造  自然界を貫く普遍的原理  「高度に発達した自然社会」へ
 今こそ、生産力信仰からの訣別を

第四章 森と海を結ぶ菜園家族

1 日本列島が辿った運命
 森と海を結ぶ流域循環  森から平野へ移行する暮らしの場  高度経済成長と
 流域循環  「日本列島改造論」  断ち切られた流域循環  終末期をむかえた「拡大経済」  幻想と未練の果てに  重なる二つの終末期

2 森と海を結ぶ「菜園家族」エリアの形成
 森はなぜ衰退したのか  流域地域圏構想と市町村合併問題  二一世紀、山が動く
 森が甦る契機  地域政策の重要性  国・地方自治体の具体的役割  エリア
 再生の拠点としての「学校」

3「家族」と「地域」―共同の世界
 変化の中の「地域」概念  現存「集落」の歴史的性格 “共同の世界” を支えた
 もの  身近なことから  「集落」再生の意義

4 菜園家族エリアの構造、その意義
 「集落」の再生と「なりわいとも」  「菜園家族」と「くみなりわいとも」
 基本共同体「村なりわいとも」  森と海を結ぶ「郡なりわいとも」 非農業基盤
 の「匠商家族」  「匠商家族」と「なりわいとも」 「なりわいとも」とエリア
 の中核都市の展開  「なりわいとも」の歴史的意義

終章 人が大地に生きる限り

 歴史における人間の主体的実践の役割  自己鍛錬と「地域」変革主体の形成
 未踏の思考領域に活路をさぐる  理想を地でゆく

文献案内

あとがきにかえて

                *ご感想・ご意見・内容のお問い合わせ等は、
                 里山研究庵Nomad、
                 または日本経済評論社編集部まで。

著者略歴


小貫 雅男(おぬきまさお)

1935年中国東北(旧満州),内モンゴル・ホルチン左翼中旗・鄭家屯生まれ。1963年大阪外国語大学モンゴル語学科卒,65年京都大学大学院文学研究科修士課程修了。大阪外国語大学教授,滋賀県立大学人間文化学部教授を歴任。現在,滋賀県立大学名誉教授,里山研究庵Nomad主宰。専門は,モンゴル近現代史,遊牧地域論,地域未来学。著書に『遊牧社会の現代』(青木書店),『モンゴル現代史』(山川出版社),『異文化体験のすすめ』(共著,大阪書籍),『騎馬民族の謎』(共著,学生社),『モンゴル史像の再構成』(モンゴル語版,高槻文庫),『遊牧社会- 現在と未来の相克の中で』(モンゴル語版,高槻文庫),『菜園家族レボリューション』(社会思想社),『森と海を結ぶ菜園家族―21世紀の未来社会論―』(共著,人文書院)など,映像作品に『四季・遊牧―ツェルゲルの人々―』(共同制作,大日)がある。

伊藤 恵子(いとうけいこ)

1971年岐阜県生まれ。1995年大阪外国語大学モンゴル語学科卒,97年同大学大学院外国語学研究科修士課程修了,99年総合研究大学院大学文化科学研究科博士後期課程中退。滋賀県立大学人間文化学部非常勤講師を経て,現在,里山研究庵Nomad研究員。専門は,遊牧地域論,日本の地域研究。著書に,『森と海を結ぶ菜園家族―21世紀の未来社会論―』(共著,人文書院),論文に「遊牧民家族と地域社会―砂漠・山岳の村ツェルゲルの場合―」(滋賀県立大学人間文化学部紀要『人間文化』三号)など,映像作品に『四季・遊牧―ツェルゲルの人々―』(共同制作),そのモンゴル語版『Malchin Zaya』(制作統括)がある。

上映&学習の輪の広がりを!




      人々の出会いが
       語らいが、21世紀の明日をつくる!


   津々浦々に
     あなたが、私たちが主催の

      上映&学習の輪の広がりを!


      キャンパスは、茶の間や、お寺や、町家カフェ、公民館・・・
      テキストは、映画『四季・遊牧』と読本『菜園家族物語』


    ※時間が許される限り、里山研究庵Nomadより制作者も参加します。


★上映&トークの集い   

  〜映像作品 モンゴル『四季・遊牧』(DVD)の世界から、
    私たちの暮らしを考える〜

       甦る大地の記憶
           心ひたす未来への予感


★菜園家族の学校     

  〜『菜園家族物語―子どもに伝える未来への夢―(日本経済評論社 刊)を
    テキストに、21世紀の明日を探る〜

       学ぶとは、希望を語り、
            誠実を胸に刻むこと

     

◆各地に、『集い』や『学校』が自主的に芽生え、素晴らしい活動に発展してゆくことを願っています。里山研究庵Nomadは、その様子をホームページに掲載し、多くの人々と情報を共有してゆきたいと思います。

◆プログラム例、今後の日程など、上映&学習会のさらに詳しい情報は、交流部門(1)をご覧ください。

◆みなさんが上映&学習会を計画される際には、これまでの経験をもとに、ご相談に応じたいと思います。お気軽にご連絡ください。

書評・紹介・ご感想など


 『菜園家族物語―子どもに伝える未来への夢―』への書評・紹介・ご感想などは、こちらに順次、掲載してゆきます。
 「菜園家族」構想を多角的に考えてゆく上で、ご参考になればと思います。

☆みなさんのご感想も、ぜひ、里山研究庵Nomadまでお寄せ下さい。お待ちしています!☆

挿絵をご提供くださった方々のご紹介


 本書『菜園家族物語―子どもに伝える未来への夢―』をまとめるにあたっては、挿絵や版画、歴史的な写真、資料など、貴重な図版190点余を、 画家・研究者・市民活動家・農山村集落のみなさん・ゼミ卒業生・出版社・新聞社等、様々な分野の方々のご協力とご厚意により、掲載させていただくことができました。
 ややもすると無味乾燥なものに流れがちなこの本に、みずみずしい豊かな視覚的イメージを添えていただいたと、深謝する次第です。

 挿絵をご提供くださった水野泰子さん(北海道)、前田秀信さん(長崎県)、志村里士さん(滋賀県)・・・、これら3人の方々の作品に共通していることは、今は過去となった情景に徹しながらも、未来への確かなメッセージが伝わってくることです。
 それは、すっかり失われてしまった人間のあたたかさを、次代へ甦らせたいという、共通の願いがあるからなのかもしれません。
 本書に込められた「子どもに伝える未来への夢」が、読者の方々の胸に多少なりとも息づきはじめることがあるとするならば、これら作品のお陰であると、心より感謝しています。

 このコーナーでは、これらの方々をご紹介したいと思います。


☆ 水野泰子さん (版画家)

みずの やすこ―東京都出身。木版画と詩の制作を40年以上続けている。北海道在住。
主な作品集:『ひとりの時 第二集〜木版画と詩〜』(2000年)、
      『あたたかな風景〜版画・詩集〜』(碧天舎、2003年)ほか。

 

 爺々にれ    (画・水野泰子)

 

北の大地・札幌で、あたたかな思い出を木版画に込める水野さんには、数々の作品を本文中に掲載させていただいたのに加え、作品「爺々にれ(ちゃちゃにれ)」をジャケット装画に使用させていただきました。
 2006年早春、拙著への作品掲載をお願いした時、偶然にも、「この夏、モンゴルを旅する予定です」とのこと。これも何かのご縁でしょうか・・・。
 素朴な作品をじっと見つめていると、様々なことに想像はふくらみ、思いは深まります。

 

 好きなうた         (画・水野泰子)

 

『あたたかな風景〜水野泰子版画・詩集〜』「あとがき」より
 戦中、戦後を生きてきた私には、辛いことも沢山ありました。その困難を何とか乗り越えることが出来たのは、今から思えば、やさしい父母と5人のきょうだい、時間を忘れて思う存分に遊んだ数多くの友達、そして疎開先での美しさに満ちた自然、そこで出会った人々、そんなものに囲まれて過ごした、まことに幸せな私の子ども時代があったればこそ、のような気がしています。
 また、去年(2002年)他界した夫の存在があったればこそ、その大きな懐に安住して制作に打ち込めたのかもしれません。この世のいちばん弱いものに目を向け、それをいとおしむことを教えてくれた人でもありました。
 このような経験がこれからもずっと、私の心の中の宝物となって、生きる力を与え続けてくれるであろうことを信じています。            (水野泰子)

 

 5人きょうだい―戦争のまえ― (画・水野泰子)

 

詩「あなたが逝ってしまって―それから―」 水野泰子

 春―
 舗装された道の小さな隙間から
 イタドリやオヒシバが萌え出ている
 ふと あなたのことを思う

 紅鮭の切り身をたべる
 遠い海から運んできてくれた鮮やかな紅色
 小さないのち
 私はまた あなたのことを思う

 あなたが逝ってしまって
 それから
 野原はいたるところ駐車場になり
 山々の木は伐りはらわれて
 ゴルフ場になってしまった

 「芸術の森」ではベレー帽の人たちが
 野外彫刻を並べている
 鳥たちは棲み処を追われてしまった

 マイ・カーで通れば挨拶は要らない
 道をゆずるしかない
 クルマはとても強いから
 騒音と排気ガスを浴びせかけても
 謝らなくていい
 そんな世の中

 マンション ゴルフ場 銀行 デパート
 マイ・カー レジャー・センター 高速道路
 ケイタイ BSデジタル
 どれひとつ
 あなたの言葉にはなかった

 

 わたしの追分       (画・水野泰子)

 

 静かな追分の夜々に
 あなたが語って下さった
 つくし あけび きのこ 畑の苺 たまご
 お酒 村の敬老会 汗のにおい ねこ
 お小昼(こびれ) やま ほたる
 そして すずらんのしろい花

 あの時
 私はまだとても若くて
 謎のようにひびくしかなかった
 このやさしいことばの数かずに
 あなたが どんなに
 熱い厳しい思いをこめていたのか
 老年を迎えてやっとわかりかけた今
 あなたはもういない

 人なかでそっと
 すずらんのしろい花のことを言ってみる
 でも 人々はみな
 マイ・カーを磨きたててはショッピングに
 行ってしまう

 今日もまた どこからか
 ブルドーザーの音が聞こえて
 私は仕方なくおろおろと歩きまわる

 ああ 今こそもういちど
 あなたの言葉を聞きたい
 こよなくやさしい
 なぐさめのことばを
 はげましのことばを


☆ 前田秀信さん (画家)

 

         初夏    (画・詩 前田秀信)

忍音過ぎて
山に響くホトトギス
青草のびて
今日も
山羊の餌刈り

 

まえだ ひでのぶ―長崎県瑞穂町生まれ。東京デザイナー学院卒業。
         九州グラフィック展等 受賞多数。作品展 多数回。長崎市在住。
         ホームページ:http://homepage1.nifty.com/kousagi/

主な作品集:童画集『父がいた日』(木耳社、2008年)Nomad image
      童画詩文集『思い出日記〜太陽がくれた味〜』(木耳社、2007年)Nomad image
      童画詩文集『こども歳時記〜絵と文でつづる四季暦〜』
      童画詩文集『想い出の情景〜四季のこどもたち〜』
      ポストカードブック『こどもの風景Card Book』
                  (以上 木耳社、2005年)ほか。

主な絵本:『みんなどうしているかしら』(フレーベル館)
     『とことこやってきた』(チャイルド本社、日本語版、韓国語版)ほか。

その他:長谷川集平作『デビルズ・ドリーム』挿絵担当(理論社)
    NHK BSおよびWTV(国際放送=100ヵ国)で『跳町発市』放映

 

        飛び込み   (画・詩 前田秀信)

青い空へ
ひとっとび
白い空に
ひとっとび
みんなを見ながら
僕はふるえて
飛び込み台の上

 

野山、小川、海辺…。四季折々の自然の中を駆けめぐる、溌剌とした子どもたち。
遊びも仕事も渾然一体。田植え、薪割り、餅つきなどなど、大人にまじって大活躍。
 前田さんの童画とそこに添えられた詩文は、ご自身が体験されたふるさと長崎での少年時代の原風景を、抒情豊かに現代に甦らせます。
 それらは、私たちの心に、懐かしさとともに、むかうべき未来の暮らしの像をも、呼び起こしてくれるようです。
 2006年初夏、拙著への作品掲載をお願いしたところ、「“菜園家族”・・・。あえて僕は言葉にしませんが、言いたいことは正に同じです。地球という天然の上と中に存在しているのが、命を持った自然です。空気があることに、きれいな水があることに、太陽の光があることに、喜びを忘れてはいけません。一人でも多くの人たちの目にふれて、考えていただきたいものです。」と、ご快諾くださいました。

 
       薪割り   (画・詩 前田秀信)

五右衛門風呂だから
薪がいる。
もちろんご飯もかまどで炊く。
だから
一年分の薪割りを
この時期にすませる。
十本ほどだと
楽しいんだけどね。

 

『こども歳時記』「大切な瞬間―序にかえて」より
 なぜか梅雨の頃にビワの実は熟した。
 季節ごとにそれぞれの木々や草たちは実をつけ、幼かった僕らの心と体を満たしてくれた。故郷は、もう遠くに過ぎた時間の中に存在する。それがいつのまにか幼い日々をシーンとして今、現実の目の前に現れてくる。めぐる季節が、常に心の中にある。忘れかけた大切なモノであることがある。
 そのことを絵として描きたいわけではない。それが思い出であるとしても、その時間に出会いたいと思うわけでもない。
 でも―、思う。そこに父がいて母がいて、そしてそこに生まれて、故郷という田舎の中にあった生き物たちや自然、時の流れのままに生きていたその時が最も大切な瞬間だったような気がする。
 やはり、今年も、梅雨の頃にビワは実をつけ、その頃青かった柿の実も、秋になるとオレンジ色へと変わる。
 すべての流れが、ゆったりとしていたような気がする。その時の流れを今も忘れてはいない。                         (前田秀信)

 

『こども歳時記〜絵と文でつづる四季暦〜』
(前田秀信、木耳社、2005年)

 

『想い出の情景〜四季のこどもたち〜』
(前田秀信、木耳社、2005年)

 

『思い出日記〜太陽がくれた味〜』
(前田秀信、木耳社、2007年)
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『父がいた日』
(前田秀信、木耳社、2008年)
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前田秀信さんホームページ:http://homepage1.nifty.com/kousagi/

 

☆ 志村里士さん (画家)

 

                     画 志村里士
                 (『菜園家族物語』に掲載)

 

しむら さとし―滋賀県生まれ。日本美術会民美研究所卒業。
      滋賀県造形集団団員。個展(主にボールペン画)を開催。
      有機農業にも取り組んでいる。大津市在住。
主な作品集:『絵でつづる小旅〜志村里士画文集〜』(1994年)ほか。

 

                     画 志村里士
                 (『菜園家族物語』 に掲載)

 

地元琵琶湖畔をこよなく愛し、身近な暮らしにこだわり描く志村さん。
 拙著に掲載させていただいた数々の作品は、時がおしせまった頃、大津で開催されていた絵画展の会場でお会いし、新たに制作をお願いしたものです。
 短期間に20点にもおよぶ制作という、無理なお願いにもかかわらず、お人柄そのままの明るくたのしいタッチで、そのとき語り合った思いを像に結んで下さいました。
 日々、土に触れ、また湖国各地の風土に親しんでおられるからこそ、生まれてくる作品であることを実感します。

 

   (垰田富子・志村里士二人展inギャラリー風の門・大津、2006.11.3〜12に出品)

 

「志村里士展 TINY WORKS 2004」
 in Tea & Gallery るーむブナ・滋賀県志賀町、2004.9.9〜14の『CATALOG』より

 絵を描けることに、感謝しています。生活のいろいろな心配はありますが、いま世界では、戦争のためにその日をどう暮らすかで精一杯の人々もたくさんいます。平和であってこそ、絵が描けるのだとあらためて感じているところです。 
 芸術活動の基本は、私のいまの生活のなかにあると思っています。
 環境問題が教えてくれるのは、外国から環境をそっくり輸入することはできないことです。
 であるなら、私の創作活動も、私の身の回りからその題材を取り上げ、あるいは素材を取り上げていくのが、無理をしない私のやりかた――だと思うのです。 
                               (志村里士)

 

     (上記「TINY WORKS 2004」に出品)

 

志村さんからのメッセージ
 今、近江の湖西で、有機農業に取り組んでいます。昔から一部実践していたものを、他の作物にもひろげていこうと思っています。
 私は、昔からミミズが好きで、ミミズのふしぎな生態には驚かされっぱなしです。
 それから、クモもふしぎなかわいい存在です。
 菌類もふしぎでたまりません。微生物は目に見えない分、私たちの暮らしに深くかかわっているのではないかと考えています。
 微生物やミミズやクモが元気に暮らしていける環境が、実は、私たちを生かしてくれるのかも知れないと思っています。微生物のたくさん棲んでいる土を大切にしたいと願っています。

志村里士さんブログ「くさねずみのお宿〜農ある暮らしでいきいきと〜」:http://kusanezumi.spaces.live.com/

  
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