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大学での講義

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a.遊牧地域論について

日本・モンゴル共同ゴビ・遊牧地域研究プロジェクト(略称 ゴビ・プロジェクト)の第一次調査が開始されたのは、1990年のことであった。

“ゴビ・プロジェクト”がどのようにしてはじまったのか、“ゴビ・プロジェクト”に至るまでの調査・研究の経緯のあらましと、“ゴビ・プロジェクト”がはじまってから後の調査の経緯とその内実をたどっていくと、“遊牧地域論”とでもいうべきものが、次第に浮びあがってくることに気がつく。

この“遊牧地域論”なるものが一体何であるのかについては、ここでは詳しく触れることは差し控えるとして、日本における、とくに戦中・戦後の“遊牧研究”の流れとはかなり違ったものが、そこには想定されてくるような気がする。これまでの“遊牧研究”が、主として文化人類学の関心から、家畜の側に重点がおかれ、牧畜技術やそれにまつわる習俗・儀礼とったものに関心がむけられてきたとすれば、“遊牧地域論”は、自然や家畜の領域を包括しつつ、むしろ、家畜の利用によってそこから生活の糧を得て生きている人間、さらには家族・共同体といった人間集団や、「地域」といったものの側に関心の重点がおかれてきたように思われる。

自然ー家畜ー人間集団といった系のそれぞれ次元の異なるここバラバラの事象を、自然と人間の一つのまとまりをもった特定の生活空間、すなわち「地域」の設定によって、人間の“いのち”の再生産と“もの”の再生産を基本にしておこなわれる物質代謝の循環系の、統一ある有機的なメカニズムの体系として捉えようとする。“遊牧地域論”は、このことを方法の核心に捕らえている。したがって、それぞれ次元の異なる個々の事象を研究対象にしながらも、究極においては、人間の生産と生活の“場”である「地域」、さらには人間そのものに収斂されていく。“遊牧地域論”は、こうした研究として想定されるものである。

b.主な論文著作

小貫雅男・伊藤恵子 ブックレット 『森と湖(うみ)を結ぶ 菜園家族 山の学校』、里山研究庵Nomad、2009年

小貫雅男・伊藤恵子 『菜園家族21 ―分かちあいの世界へ―』、コモンズ、2008年

小貫雅男・伊藤恵子 『菜園家族物語 ―子どもに伝える未来への夢―』、日本経済評論社、2006年

小貫雅男・伊藤恵子 『森と海を結ぶ菜園家族 ―21世紀の未来社会論―』、人文書院、2004年

小貫雅男 『菜園家族レボリューション』、社会思想社・現代教養文庫、2001年

小貫雅男 『三世代「菜園家族」酔夢譚』、Nomad、2000年

小貫雅男・伊藤恵子 映像作品『四季・遊牧―ツェルゲルの人々―』、1998年

小貫雅男・伊藤恵子 解説パンフレット『四季・遊牧―ツェルゲルの人々―』、Nomad、1998年

小貫雅男 「ある“遊牧地域論”の生産過程」 『人間文化』第3号(滋賀県立大学人間文化学部紀要)、1997年

*「'92秋〜'93春 越冬調査報告」 『モンゴル研究』No.15、モンゴル研究会、1993年

伊藤恵子 「遊牧民家族と地域社会」 『人間文化』第3号(滋賀県立大学人間文化学部紀要)、1997年

小貫雅男 「ブルドが問いかけるもの―“周辺”、“辺境”からの発想―」 『歴史学研究』No.574、青木書店、1987年

小貫雅男 「モンゴル革命把握の前提―モンゴル近代史の位置づけと東アジア―」 『歴史学研究』No.410、青木書店、1974年

小貫雅男 「近代への胎動―モンゴル東部の地方、ト・ワン・ホショーの場合―」 『歴史科学』第90号、大阪歴史科学協議会、1982年

小貫雅男 「モンゴルにおける歴史研究とわれわれ」 『歴史学研究』No.439、青木書店、1976年

小貫雅男 「モンゴルにおける民族形成の特質―東アジア歴史構造との関連で―」 『歴史における民族の形成』(『歴史学研究』別冊特集)、青木書店、1975年

小貫雅男 『遊牧社会の現代―モンゴル・ブルドの四季から―』、青木書店、1985年

小貫雅男 『モンゴル現代史』、山川出版社、1993年

c.大学での講義「モンゴル社会演習」(2009年度)

 2009年度は、大阪大学外国語学部(旧 大阪外国語大学)にて、モンゴル語専攻の学生を対象に、「モンゴル社会演習」の授業を担当します(伊藤恵子)。
 内容は、以下のような予定です。

 モンゴル社会演習Ia(前期)
講義題目  市場経済移行期の遊牧地域
授業のねらい
 市場経済への移行から15年余、今、モンゴルは、グローバル化の波の中、首都への人口集中、格差拡大など、経済・社会の様々な困難を抱えている。
 これらの諸問題について、今一度、原点に立ち返って、遊牧地域からの視点で考察し直す。
 そのために、体制移行の激動期のただ中に研究調査をおこなった、バヤンホンゴル県ボグド郡の山岳・砂漠の村ツェルゲルという一つの具体的な遊牧「地域」を題材としてとりあげ、その四季折々の自然と、そこに生きる人々の姿、伝統的遊牧共同体の復活、地域再生への模索、その歴史的背景などから、多角的に考えてゆく。           
授業の展開計画           
 1992年秋から1年間にわたる住込み調査に基づいて制作したドキュメンタリー映像作品『四季・遊牧―ツェルゲルの人々―』(監督・撮影 小貫雅男、編集 伊藤恵子)を順次、鑑賞し、解説を加えるとともに、討議を通じ、理解と考察を深めてゆく。
 『四季・遊牧』(三部作、全6巻、7時間40分)の構成
  第I部 厳冬に耐える ―再生への模索― 1992年秋〜冬
  第II部 春を待つ、そして夏 ―試行を重ねる― 1993年早春〜夏
  第III部 忍び寄る秋 ―歓喜、そして思索― 1993年盛夏〜晩秋

 モンゴル社会演習Ib(後期)
講義題目  「家族」と「地域」の視点から見るモンゴルと日本
授業のねらい
 昨2008年のアメリカ金融危機に端を発する、100年に1度とも言われる世界同時不況は、今、私たちに、これまでの生産と暮らしのあり方を根本から考え直すよう迫っている。
 この授業では、まず、前期の「モンゴル社会演習Ia」の内容をふまえ、その後のツェルゲル村の姿を辿りながら、現在のモンゴルの国づくりの基本理念を見つめ直す。
 同時に、熾烈なグローバル市場経済の渦の中、ますます混迷の度を深めている日本の私たち自身の今を、「地域」の視点から考えてゆく。
 それは、モンゴルと日本を複眼的に捉えながら、人間にとって、「自然」とは、「家族」とは、「地域」とは一体何なのかを根源的に問いつつ、21世紀にめざすべき新しい未来社会像を探ることになるであろう。
授業の展開計画
 主に以下のような内容に沿って、講義と対話を通じ、理解と考察を深めてゆく。
  (1)私たちはどのような時代に生きているのか
  (2)遊牧「地域」の“自立と共生”を切り崩す市場原理
  (3)岐路に立つモンゴル〜国土開発計画の考察〜
  (4)現代工業社会と人間〜世界経済の破局的危機の中であらためて考える〜
  (5)私たちの「地域」は今〜日本の過疎山村・大君ヶ畑(滋賀県鈴鹿山中)から〜
  (6)「菜園家族」構想〜21世紀、自然循環型共生社会への展望〜
  (7)「地域」研究と未来〜モンゴルと私たちを結ぶもの〜
テキスト
  小貫雅男・伊藤恵子『菜園家族21―分かちあいの世界へ―』(コモンズ、2008年)
  小貫雅男・伊藤恵子『菜園家族物語―子どもに伝える未来への夢―』(日本経済評論社、2006年)

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