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文化・発信部門1 最新刊『菜園家族21―分かちあいの世界へ―』
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Nomad image紹介

里山研究庵の紹介

 滋賀県の東辺に連なる鈴鹿山脈。この山中から発する犬上川は琵琶湖に注いでいます。この川筋の北流を遡り、三重県との県境に近づくと、突然人家があらわれます。大君ヶ畑(おじがはた)という山あいの集落で、落葉樹の若葉に映える渓流に沿って、昔ながらの農家が四十数戸、ひっそりと居を構えています。

 二〇〇一年六月からこの大君ヶ畑の農家の空家に移り住むことになりました。恐る恐る裏の勝手口の戸を開けると、五右衛門風呂の炊き口がタイムスリップでもしたかのように目に飛び込んできます。広い玄関のひんやりとした土間から座敷にあがる敷居に腰をおろして、一休みしていると、突然燕が玄関口から飛来して、天井の梁の古巣をのぞき込んでは出てゆきます。長年戸締りになった空家に新参者が現れたのだから、無理もありません。いかにも機敏に羽ばたく翼が嬉しさを隠しきれません。人気の無い死にかけた農家にも、こうしてとにかくいのちを吹き込むことになったのです。

 この大君ヶ畑に住みつくことになったのには、それなりの訳があります。  今振り返ってみると、全国各地でつづけられてきた『四季・遊牧―ツェルゲルの人々―』の上映活動と深い関わりがあることに気づきます。南は沖縄から北は仙台まで、百十回におよぶこの上映会には二万人に迫る人々が参加しました。意外なことに、ほとんどの人々が、この作品を単にモンゴルの遊牧地域の出来事としてというよりも、むしろ今日の日本の家族や地域や子どもの教育の問題、さらには日本の経済そのもののあり方、つまり私たち自身の未来の問題として受け止めようとしているのです。私自身も改めてこうした参加者の熱意や真摯な姿勢に押されるようにして、同じ思いを共有しつつ、この間ずっと日本の地域問題を今までになくリアルに考えつづけてきました。そして、「21世紀・日本のグランドデザイン」を素描するつもりで、小冊子『週休五日制による三世代「菜園家族」酔夢譚』(二〇〇〇年五月一日、Nomad刊)を執筆し、各地でおこなわれる上映会で配布してきました。

あまりにも大胆な提言に映ったのか、賛否両論にわたり、予想をはるかに越えるさまざまな分野の方々から率直なご意見が寄せられました。こうした中で、具体的に特定の「地域」を捉えたい、と思うようになってきたのです。その上で「菜園家族」構想をより説得力ある実現可能なものに仕上げてゆきたい。大君ヶ畑に住むことになったのは、こうした経緯からでした。

 大学の研究室は、活動が多岐にわたるにつれていよいよ狭くなってきました。通常の研究以外に、映像の編集機器などを持ち込む余裕などなくなってきたのです。数年前、モンゴルの山岳・沙漠の村ツェルゲルで実行したように、土地に住みついてはじめて「地域」の心を捉える映像が可能になるのだと、という確信にも似た思いに急き立てられながら、そんなあんなを理由にとうとう腰をあげることになったのです。山深い大君ヶ畑の中腹にひっそり佇む空き農家を、里山研究庵Nomadと名づけての新しい出発です。

 里山研究庵のある犬上川の北流、そして同じく鈴鹿山脈を源に、犬上川の南流と芹川が琵琶湖にむかって走っています。これらの渓流に沿って。山深い山中の各所に集落が散在しているのですが、どの集落も予想以上に過疎化がすすみ、今は空き農家が多くなっています。里山研究庵Nomadを拠点に、この三つの水系の山中一帯を調査の対象とし、ちょっぴり欲張りではありますが、このホームページに掲載したような抱負を抱いて、これからゆっくりと活動をつづけてゆきたいと願っています。調査活動のいかんによっては、この広大な森林一帯が「菜園家族」構想のモデル地域として、具体的な像を結び浮びあがってくるのではないかと、夢は広がってゆきます。

主宰・スタッフ紹介

小貫 雅男 (おぬき まさお)
里山研究庵Nomad主宰


                (photo by Satoshi KUSAKA)

1935年 中国東北(旧満州)、内モンゴル・ホルチン左翼中旗・鄭家屯生まれ。

1963年 大阪外国語大学モンゴル語学科卒、65年京都大学大学院文学研究科修士課程終了。大阪外国語大学教授,滋賀県立大学人間文化学部教授を歴任。2005年3月をもって、滋賀県立大学を定年退職。同大学名誉教授。 専門は、モンゴル近現代史、遊牧地域論、地域未来学。

◆東西対立の終焉という激動期に、日本・モンゴル共同のゴビ遊牧地域研究プロジェクトを組織。同時に、日本の農山村の調査に取り組む。常に「辺境」からの視点で現代を見つめ、世界史的視野から未来社会論の構築に取り組んでいる。

◆著書に『遊牧社会の現代』(青木書店,1985年)、『モンゴル現代史』(山川出版社、1993年)、『異文化体験のすすめ』(共著、大阪書籍、1986年)、『騎馬民族の謎』(共著、学生社、1992年)、『モンゴル史像の再構成』(モンゴル語版、高槻文庫、1984年)、『遊牧社会-現代と未来の相克の中で』(モンゴル語版、高槻文庫、1990年)、『菜園家族レボリューション』(現代教養文庫、2001年)、『森と海を結ぶ菜園家族 −21世紀の未来社会論−』(共著、人文書院、2004年)、『菜園家族物語―子どもに伝える未来への夢―』(共著、日本経済評論社、2006年)、『菜園家族21―分かちあいの世界へ―』(共著、コモンズ、2008年)、『森と湖を結ぶ〜菜園家族 山の学校』(共著、Nomadブックレット、2009年)など、映像作品に『四季・遊牧 −ツェルゲルの人々−』(共同制作、大日、1998年)がある。

伊藤 恵子 (いとう けいこ)
里山研究庵Nomad研究員

1971年 岐阜県本巣郡生まれ。

1997年 大阪外国語大学大学院修士課程修了。2005年度まで、滋賀県立大学人間文化学部非常勤講師。2008年度から、大阪大学外国語学部非常勤講師、2009年度から、立命館大学経済学部非常勤講師(☆講義の概要は、こちらへ)。 専門は、モンゴル遊牧地域論、日本の地域研究。

◆学生だった1991年夏以来、モンゴル・ゴビ遊牧地域での研究調査活動(越冬調査を含む)に参加。その記録映像作品『四季・遊牧』を共同制作し、上映活動を全国各地で展開。併行して、日本の農山漁村での調査にも参加。現在、近江の農山村を主なフィールドに、不安定社会を生きる若者世代の視点から、地域のあり方を探っている。

◆主な作品に「変容する遊牧地域社会−モンゴル・ツェルゲルの場合」(卒業論文,1995年)、「遊牧共同体と地域社会−ホタ・アイルからの考察−」(修士論文,1997年)、「遊牧民家族と地域社会−砂漠・山岳の村ツェルゲルの場合」(滋賀県立大学人間文化学部紀要『人間文化』第3号,1997年)、映像作品『四季・遊牧−ツェルゲルの人々−』(三部作全6巻,共同制作,大日)、映像作品『マルチン・ザヤー』(モンゴル語版『四季・遊牧−ツェルゲルの人々−』)(制作統括,2004年)、『森と海を結ぶ菜園家族 −21世紀の未来社会論−』(共著,人文書院,2004年)、『菜園家族物語―子どもに伝える未来への夢―』(共著、日本経済評論社、2006年)、『菜園家族21―分かちあいの世界へ―』(共著、コモンズ、2008年)、『森と湖を結ぶ〜菜園家族 山の学校』(共著、Nomadブックレット、2009年)などがある。

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