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文化・発信部門5
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『菜園家族レボリューション』・『森と海を結ぶ菜園家族』とその他の出版,翻訳
a.『菜園家族レボリューション』
米国型「拡大系社会」からCFP複合社会へ 巨大化の道の弊害と行詰まりが浮彫りになった今、その評価を問い小経営の持つ優れた側 面を再考する。 今、深刻な不況と実に暗い閉塞(へいそく)状況の中にありながらも、耳を澄ませ聞き入る心 の余裕があるならば、はるか遠い地平から幽(かす)かな響きではありますが、今までにはな かった未来への確かな足取りとうねりが感じとれるからなのです。そして、そのうねりの正体 は、何よりも人々のひたむきな姿勢そのものであり、人間の尊厳を希求してやまない魂の叫び でもあるように思えるのです。人間を大地から引き離し、虚構の世界へと益益追いやる市場 競争至上主義の“拡大経済”に、果して未来はあるのでしょうか。ここに提起する“大地に生き る”人間復活の唯一残されたこの道に、“菜園家族レボリューション”の思いを込めたいと思い ます。 ※ CFP複合社会 この社会は大きく三つのセクターから成り立つ複合社会であるということです。その三つのセ クターのうちの一つは、極めて厳格に規制され、調整された資本主義セクターであり、二つ目 は、週休五日制による“三世代「菜園家族」”を主体に、その他の自営業を含む、家族小経営 セクターということになります。 そして、三つ目は、国の行政官庁や都道府県・市町村の行政官庁や教育・医療・社会福祉 などの国公立機関、あるいはその他の公共性の高い事業機関からなる公共的セクターで す。 最初の資本主義セクターをセクターC(Capitalism)、次の家族小経営セクターをセクターF (Family)、そして三つ目の公共的セクターをセクターP(Public)とすると、ここで提起されると ころのこの新しい複合社会は、より正確に規定すれば、「菜園家族」を基調とする“CFPの複合 社会”と言うことができます。さて、セクターFの主要な構成要素である「菜園家族」にとって は、自然の四季の変化に応じて巡る生産と生活の循環が、“いのち”です。ですから、「菜園 家族」は、この生産と生活の循環を持続させるということが、何よりも大切になり、それにふさ わしい生産用具と生活用具を備えなければなりません。 プロローグモンゴル遊牧社会の研究をはじめてから、いつのまにか長い歳月が過ぎてしまいました。そ の間、草原や山岳・砂漠の遊牧民家族と共に生活し、一年あるいは二年という長期の住込み 調査や、短期のフィールド調査をまじえながら、日本とモンゴルの間を何回も行き来すること になりました。 ここに提起される日本社会についての未来構想は、この両極を行き来しながら、風土も暮ら しも価値観も、日本とは対極にあるモンゴルから日本を見る視点、そして、そこから生ずる何 とも言いようのない不協和音を絶えず気にしつつ、長年考えてきたことが下敷きになっている のかもしれません。 モンゴルの遊牧民からすれば、日本は「輸入してまで食べ残す不思議な国ニッポン」に映る ことでしょう。本当は憤りさえ覚えているのかもしれません。高飛車に「あんたたちは、経済と いうものを分かっちゃいないんだよね」などと言って、世事に擦れた感覚に、薄汚れた常識を 振り回し、せせら笑ってすませる場合ではないのです。 話は前後しますが、こうした日本とモンゴルの間の長年の行き来の中でも、とくに一九九二 年秋からの一年間、山岳・砂漠の村ツェルゲルでの生活は、日本社会のこの未来構想を考 える上で、貴重な体験になっています。 一九八九年のベルリンの壁の崩壊、それにつづく民主化の波は、内陸アジアの奥地モンゴ ルの遊牧地域にも押し寄せてきました。遊牧の集団化経営ネグデル(旧ソ連のコルホーズを 模倣してつくられた組織)の破綻(はたん)の中から、伝統的遊牧共同体の再生への動きが はじまります。この中で、遊牧民たちは新たに降りかかってくる市場経済に対抗して、自らの 暮らしを守るために新たなる“共同”への模索をはじめるのです。 文庫版へのあとがき……“菜園家族レボリューション”。これを文字どおりに解釈すれば、菜園家族が主体となる 革命のことを意味しているのかもしれません。しかし、“レボリューション”には、自然と人間界 を貫く、もっと深遠な哲理が秘められているように思えるのです。それは、もともと、旋回であ り、回転でありますが、天体の公転でもあり、季節の循環でもあるのです。そして何よりも、原 点への回帰を想起させるに足る、壮大な動きが感じとれるのです。イエス・キリストにせよ、 ブッダにせよ、わが国近世の希有な思想家安藤昌益にせよ、あるいはルネサンスやフランス 革命にしても、レボリューションの名に値するものは、現状の否定による、原初への回帰の情 熱によって突き動かされたものなのです。現状の否定による、より高次な段階への止揚(アウ フヘーベン)と回帰。それはまさに、「否定の否定」の弁証法なのです。現代工業社会の廃墟 の中から、それ自身の否定によって、田園の牧歌的情景への回帰と人間復活の夢を、こ の“菜園家族レボリューション”に託して、結びにかえたいと思います。 書評・紹介・ご感想など 『菜園家族レボリューション』への書評・紹介・ご感想などは、こちらに順次、掲載してゆきます。
☆みなさんのご感想も、ぜひ、里山研究庵Nomadまでお寄せ下さい。お待ちしています!☆ b.『森と海を結ぶ菜園家族―21世紀の未来社会論―』
人は、明日があるから 今日を生きるのです。 21世紀、人々は、人類始原の、自由と平等と友愛の自然状態を
人間を大地から引き離し、虚構の世界へとますます追いやる市場競争至上主義の「拡大経済」に、果して未来はあるのでしょうか。
著者略歴
小貫 雅男(おぬきまさお) 1935年中国東北(旧満州),内モンゴル・ホルチン左翼中旗・鄭家屯生まれ。1963年大阪外国語大学モンゴル語学科卒,65年京都大学大学院文学研究科修士課程修了。大阪外国語大学教授を経て,現在,滋賀県立大学人間文化学部教授。専門は,モンゴル近現代史,遊牧地域論。著書に『遊牧社会の現代』(青木書店),『モンゴル現代史』(山川出版社),『異文化体験のすすめ』(共著,大阪書籍),『騎馬民族の謎』(共著,学生社),『モンゴル史像の再構成』(モンゴル語版,高槻文庫),『遊牧社会- 現在と未来の相克の中で』(モンゴル語版,高槻文庫),『菜園家族レボリューション』(社会思想社)など,映像作品に『四季・遊牧-ツェルゲルの人々-』(共同制作,大日)がある。 伊藤 恵子(いとうけいこ) 1971年岐阜県本巣郡生まれ。1995年大阪外国語大学モンゴル語学科卒,1997年同大学大学院外国語学研究科修士課程修了,1999年総合研究大学院大学文化科学研究科博士後期課程中退。現在,滋賀県立大学人間文化学部非常勤講師,里山研究庵Nomad研究員。専門は,遊牧地域論。論文に「遊牧民家族と地域社会-砂漠・山岳の村ツェルゲルの場合-」(滋賀県立大学人間文化学部紀要『人間文化』三号)など,映像作品に『四季・遊牧-ツェルゲルの人々-』(共同制作),そのモンゴル語版『Malchin Zaya』(制作統括)がある。 要旨紹介
ゴビ・遊牧民に学び、地域づくりの可能性を追求したい!都市から山へ、また相互の循環の輪のなかでつくる新しい生き方の提示。 「大地」から切り離され、「いのち」から遠ざかった現代の都市型社会に生きざるを得ないわたしたち。しかし、わたしたちはどうあがいても、この母なる大地から離れては生きてゆけません。結局、そこに帰ってゆかざるを得ないのです。 長年のモンゴル遊牧社会のフィールド調査から見えてきた一つの「生きる原型」。それとの対比から、琵琶湖の東、鈴鹿山中の里山研究をベースに、「森と海(湖)」を連結・循環するライフスタイル、未来社会への積極的な方向性を提示しています。週の2日は従来型の収入確保の職業に就き、あとは自給自足の家庭菜園に従事するという「週休5日制」の大胆至極の提案が内包する、新しいタイプの生き方は、疲弊しきった現代人に思いもかけない逆転の発想をもたらすことでしょう。 【関連事項】ドキュメンタリー映像作品『四季・遊牧-ツェルゲルの人々-』全国自主上映展開中。 目次
はじめに 第一章 「菜園家族」構想の基礎 1 閉塞の時代-「競争」の果てに 2「菜園家族」の構想-週休五日制による 3 大地に明日を描く 第二章 「菜園家族」構想と今日的状況 危機の中のジレンマ 誤りなき時代認識を 「構想」の可能性と実効性 誰のための、誰による改革なのか グローバリゼーション下の選択 二一世紀の“暮らしのかたち”を求めて 第三章 「菜園家族」の世界史的位置 1 一九世紀、苦闘と思索の足跡 2 一九世紀における未来社会論 第四章 自然社会への道 1 生産手段の「再結合」 2 人間と家族の視点から 第五章 日本列島が辿った運命 森と海を結ぶ流域循環 森から平野への移行 高度経済成長と流域循環 「日本列島改造論」 断ち切られた流域循環 終末期をむかえた「拡大経済」 幻想と未練の果てに 重なる二つの終末期 第六章 森と海を結ぶ「菜園家族」 1「菜園家族」と流域循環型地域圏 2「家族」と「地域」-共同の世界 3 菜園家族エリアの構造、その意義 第七章 二一世紀、近江国循環型社会の形成 1 森と海を結ぶ流域循環型地域圏モデルの設定 2 aモデル「犬上川・芹川流域循環型地域圏」の昔と今 3 地域認識の深化と変革主体 4 犬上川・芹川流域循環型地域圏形成の目標と課題 5 近江国循環型社会から世界へ 文献案内 あとがきにかえて 書評・紹介・ご感想など 『森と海を結ぶ菜園家族―21世紀の未来社会論―』への書評・紹介・ご感想などは、こちらに順次、掲載してゆきます。
☆みなさんのご感想も、ぜひ、里山研究庵Nomadまでお寄せ下さい。お待ちしています!☆
c.その他の出版、翻訳
*小貫雅男・伊藤恵子 映像作品『四季・遊牧―ツェルゲルの人々―』DVD・ダイジェスト版(前・後編)、里山研究庵Nomad、2006年 *小貫雅男・伊藤恵子 『菜園家族物語―子どもに伝える未来への夢―』、日本経済評論社、2006年 *小貫雅男・伊藤恵子 『森と海を結ぶ菜園家族―21世紀の未来社会論―』、人文書院、2004年 *小貫雅男 『三世代「菜園家族」酔夢譚』、Nomad、2000年 *小貫雅男・伊藤恵子 映像作品『四季・遊牧―ツェルゲルの人々―』(三部作・全6巻)、農山漁村文化協会、1998年(→現在は、プロダクション大日から発売) *小貫雅男・伊藤恵子 解説パンフレット『四季・遊牧―ツェルゲルの人々―』、Nomad、1998年 *小貫雅男 「ある“遊牧地域論”の生産過程」 『人間文化』第3号(滋賀県立大学人間文化学部紀要)、1997年 *伊藤恵子「'92秋〜'93春 越冬調査報告」 『モンゴル研究』No.15、モンゴル研究会、1993年 *伊藤恵子 「遊牧民家族と地域社会」 『人間文化』第3号(滋賀県立大学人間文化学部紀要)、1997年 *小貫雅男 「ブルドが問いかけるもの―“周辺”、“辺境”からの発想―」 『歴史学研究』No.574、青木書店、1987年 *小貫雅男 「モンゴル革命把握の前提―モンゴル近代史の位置づけと東アジア―」 『歴史学研究』No.410、青木書店、1974年 *小貫雅男 「近代への胎動―モンゴル東部の地方、ト・ワン・ホショーの場合―」 『歴史科学』第90号、大阪歴史科学協議会、1982年 *小貫雅男 「モンゴルにおける歴史研究とわれわれ」 『歴史学研究』No.439、青木書店、1976年 *小貫雅男 「モンゴルにおける民族形成の特質―東アジア歴史構造との関連で―」 『歴史における民族の形成』(『歴史学研究』別冊特集)、青木書店、1975年 *小貫雅男 『遊牧社会の現代―モンゴル・ブルドの四季から―』、青木書店、1985年 *小貫雅男 『モンゴル現代史』、山川出版社、1993年 d.映像作品『四季・遊牧』のモンゴル語版
準備中(2004年、完成しました!) e.解説パンフレット『四季・遊牧』のモンゴル語版
準備中(2002年に完成、同年夏、ウランバートルにて開催された第8回国際モンゴル学会にて配布しました。) f.映像作品『四季・遊牧』の英語版
準備中 g.文庫版『菜園家族レボリューション』の英訳版
準備中
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