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山中人語
連載(2006.1.20〜)
2006年7月20日(木)雨 「小さな上映会で」 |
本格的な夏を目前に、このところ、たいへんな大雨続きの毎日です。
そんな中でも、大君ヶ畑のおじいさん・おばあさんの畑では、野菜の背丈がグンとのび、キュウリやジャガイモが実っています。
キキョウ
さて、先日、7月12日(水)に、滋賀県八日市の中心街からほど近い、中野区の公民館へ、『四季・遊牧』の上映と講演に招かれ、行って来ました。
午後からのこの会には、地元のおばあさんを中心に、30名ほどもお集まりいただきました。『四季・遊牧』からは、遊牧民の少女ハンドが、ヤギの乳搾りに、のびのびと駆けまわるシーンなどを上映しました。
ヤギの群れを追う次女ハンド(山岳・砂漠の村ツェルゲルにて)
公民館長の水上先生によれば、このあたりは、以前は、意外にも近くに森が繁り、田んぼや畑も広がっており、また、家族で営む昔ながらの商店街が立ち並び、栄えていた土地柄とのこと。
だからでしょうか、遊牧民の少女が、家族とともにふるさとの自然の中で生きる姿は、この会にご参加されたみなさんにとっては、不思議な懐かしさを呼び起こすものでもあったようで、時折、共感にも似たあたたかな笑いが、会場を包みました。
上映後は、小貫先生から、「菜園家族」構想のお話があり、みなさん、熱心に耳を傾けて下さいました
ジュウヤク
そして、とても印象的だったのは、会の終わりに、水上館長さんが語られたことです。
「現代社会の仕組みの中で、今、大人は、夜遅くまで多忙を極め、精一杯の状況です。そのような若い家族と、祖父母の世代とでは、生活パターンがずれ、孫も含め三世代で同居していても、毎日、みんなそろって夕餉の食卓を囲むことさえ、なかなか難しい、そんな時代になっています。
このような働き方、暮らし方の変化の中で、地域社会は、ますます空洞化していっています。
それでも、今、人と人とのあたたかな交流を地域に取り戻すために、身近なところで、世代を結び、この地区ではじめられることがあるのではないでしょうか。放棄された田んぼや畑も、少なからずあります。それを活かした取り組みができるのではないでしょうか・・・・・。」
館長さんは、そのように語りかけておられました。
大君ヶ畑・お隣のおじいさんからの差し入れ
このことは、いろいろな地域で、今、誰もが実感し、何とかしてゆきたいと願っている、共通の課題だと、ずっしりと感じました。
そしてまた、長年にわたって教育に携わってこられた視点から、子供たちの未来を見つめての深い思いであると、受けとめました。
本来、人が働き、暮らし、子供が育ちゆく場であるはずの地域を、今、どのように甦らせてゆくのか。地区という最も身近な規模で催していただいた、この小さな上映会で、大切なことを学ばせていただきました。(伊)
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2006年6月1日(木)晴れ 「新茶祭り」 |
犬上川上流域の鈴鹿山中に位置する大君ヶ畑
5月28日(日)は、ここ鈴鹿山中の集落・大君ヶ畑(おじがはた)で毎年恒例の「新茶祭り」の日でした。
大君ヶ畑のお茶は、そのすばらしい香りと風味で、彦根など周辺の地域のみなさんの間でも定評があります。
本来ならば、「新茶祭り」では、下の写真のように、犬上川河畔にある集落の茶畑で、前日にお茶摘みと選別をしておき、当日、茶葉を蒸し、お茶もみをします。
しかし、今年は、例年にない大雪の冬だったため、餌に困った鹿たちが河畔まで降りて来て、この茶葉を食べてしまったのに加え、前日、雨で茶葉が濡れてしまったこともあり、残念ながらお茶摘みができなかったということです。
犬上川河畔の茶畑にて(菊本 登さん、2002年5月18日)
おしゃべりを楽しみながら、茶葉の選別(2002年5月18日)
「ステーション大君ヶ畑」で、茶葉を蒸す(安藤新七さん、2002年5月19日)
炭火の上で上手にお茶もみするには、年季がいります。 (安藤要一さん、2002年5月19日)
それでも、「新茶祭り」には、大君ヶ畑とその兄弟邨・北落(きたおち=大君ヶ畑を流れる犬上川の、もう少し下流域、山のふもとにある「野」の集落)のみなさんが、鹿肉の燻製や、竹炭、木工品、陶芸品、野菜やお豆などなど、それぞれに土地の恵みを持ち寄り、それは、なかなかにぎやかな、犬上川流域地域の「森の幸」・「野の幸」の大集合でした。
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