山中人語
趣旨
「山中、人語を聞かず」。
高度経済成長を経て、今、日本の多くの山村では、豊かな森はうち捨てられ、人々は平野へと下り、荒れ果てた廃屋と畑が、過疎と高齢化の流れの中で、なすすべもなくひっそりと佇んでいます。
私たち「里山研究庵Nomad」がある、鈴鹿山中の奥山の集落、大君ヶ畑(おじがはた)の周辺にも、かつては子供たちのはしゃぐ声が、山の静寂を破って、こずえから空へと高く響き渡っていただろう、そんな廃村の跡が、散在しています。
ついこの間まで、ここには確かに人々の暮らしがあったという痕跡に遭遇した時、人はきっと、自然にとけ込むように生きてきた、先人たちの努力と叡智の積み重ねが、悠久の歴史から見れば、まさに一瞬のうちに消え去ったことを知り、自分たち現代人の浅はかさを悟ることでしょう。
こんな山中の一隅から、私たちの今を見つめ、21世紀の未来を見通したい・・・。
そんな願いを込めて、この「山中人語」はスタートします。
このコーナーでは、四季折々の山の自然とそこに生きる人々の暮らし、さらには、社会、経済、世界の動きにもふれて、気のおもむくままに書き留めてゆければと、思います。
2005年8月
里山研究庵にて(伊)
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